「す、すごいですわ……っ!!」
アルメダの歓喜の声が背後から聞こえてくる。
それもそうだろう。こんな経験、なかなかできることではない。
私とアルメダは今、ビッグの背に乗って空を飛んでいた。
ビッグにかけた『風圧無効』のおかげで、空気抵抗系のパッシブスキルを持たないアルメダも、振り落とされる心配はなく、快適に過ごせているようだ。
もちろん、ただ遊ぶために空へ飛び上がったわけじゃない。
ランガ山脈は剥き出しの岩地が多い場所だ。
上空から探せば、逃げた使用人を見つけることは容易。
ということで、ビッグの背に乗せてもらったわけである。
「キュウッ!」
意外と可愛い鳴き声でビッグは鳴く。
『服従』のスキルを使ってはいるが、全ての指示はお願いという形で行っているので、あまり身体に強制的な負担をかけずに済んでいるはずだ。
久しぶりに自由に動けて、ビッグは楽しそうだった。
「ーー見つけた」
しばらく上空を飛んでいると、地上を必死に駆けていく人間を一人見つけた。
もちろん、あの使用人だ。
「まさか身内に敵がいるなんて思いもしませんでしたわ……」
「スキル研究所の時も、身内の人間が関わっていた。貴族の家は狙われやすいのかな」
私の家にも、実は敵がいたりして……と思うが、幸いなことに全員が小さい頃からの信頼できる人間だ。
新しい人間が雇われた時は気をつけよう……。
そう思いながら、私はビッグに指示を出す。
「あいつを捕まえて、空に持ち上げてやりましょう。巨大な鳥に襲われる恐怖を自分の身で感じて、反省してもらわないとね」
「キュウッ!」
ビッグは急降下を始め、あっという間に逃げる使用人の背中を捉えた。
「う、うわぁぁぁぁっ!! なぜ、こんなことに!!」
叫びながら逃げていく使用人。私は答える。
「そりゃ、あなたが悪いことをしたからでしょ」
そして、ビッグは両足で使用人の身体をわしつかみにすると、そのまま上空へと急上昇した。
「落ちる! 落ちるぅ!!!」
「暴れると本当に落ちるからね」
そうして使用人をつかんだまま、数分間の飛行は続き、地上に戻った時には、使用人は放心状態になっていた。
巨大な鳥に襲われるということがどれだけ怖いことか、身を持って理解したようだ。