「素晴らしい。あなたの推測は大方当たっている」
ヤーク家の使用人は不気味な余裕をもって笑った。
「だが、詰めが甘い。私の戦闘力では、あなたに負けてしまうだろう。しかし、
そう言われて、私はハッとする。
化け物鳥に気を取られていたが、使用人がここにいるということは、彼の仲間が近くに潜伏していてもおかしくなかった。
「あ、赤フードさん……っ」
こわばったアルメダの声が聞こえて、私は急いで振り返る。
そこには武器を持った大人数の男たちと、捕まったアルメダの姿があった。
「赤フードの冒険者。お前が他にどんなスキルを持っているかはわからない。だが、アルメダを人質に取ってしまえば、こっちのものだ」
使用人の言葉は間違っていない。
スキルの差で勝敗が決まるのは、真っ向から勝負をした場合の話だ。
なら、より確実に相手に勝つにはどうしたらいいか。
答えは簡単だ。
相手にスキルを使えなくさせればいい。
今のように、大切な人間を人質に取ることも有効な手段。
これこそが、外道の戦術だ。
「アルメダ……!」
今まで、私はこういった戦術にほぼ引っかかったことがなかった。なぜなら、常に一人で行動してきたからだ。
だが、自分のスキルの強さに油断し、知り合いと一緒に行動したせいで、こんな事態になってしまった。
アルメダを優先的に守る、と心に決めていたのに。
だがそこまで考えて、私は気づく。
もし、アルメダを馬車の近くに置いていったとしてもーーその隣には使用人がいた。
「……なるほど。最初から、アルメダを人質に取るつもりだったのね」
「これが戦いの基本ですよ。スキルを使って、真っ向から戦闘を行うあなたは、私たちから見れば、とんだバカにしか見えない」
何を言われても、言い返せない。
私がスキルを発動しようとする素振りを見せれば、アルメダは殺されるだろう。
だから、私は動けない。
「この赤フードを拘束しろ。アルメダともども、山脈の隠れ牢獄に放り込んでおけ。殺すなよ、まだ使い道はある」
使用人はそう男たちに命令し、私とアルメダは拘束された上、牢獄と呼ばれた場所に連行されてしまった。