「スキル『強制帰還』!!」
私が使用したのは、日常的によく使われるスキルだった。
ペットや迷子になった子どもなどに使用することで、自動的に飼い主や親のところまで帰らせる効果がある。
城下町の衛兵の中には、困った人を助けるために取得している人間もいるほど、ごく一般的なスキルだった。
しかし、今回の場合は違う。
「ギ、ギャア?」
化け物鳥の両翼がものすごい勢いで羽ばたき、私を乗せた状態で浮上していく。
もちろん、化け物鳥の意思とは関係なく、だ。
飼い主のところまで戻るということは、『強制帰還』は今回に限って、化け物鳥を服従させている犯人のところへ無理矢理案内させる、強力なスキルとなる。
「赤フードさん! 大丈夫なの!?」
離れて様子を見守っていたアルメダが大きな声で呼びかけてくるが、
「大丈夫! すぐに事件を解決してみせる!」
と、私は返事をした。
化け物鳥は一定の高さまで上昇すると、空を移動し始める。ものすごい強風。
だが『空気抵抗軽減Ⅹ』のおかげで呼吸は楽にできた。
そもそも、王国からここまで来る間の高速移動の方がきつい。
化け物鳥はある方角へとまっすぐ飛んでいく。
その方向を確認して、私は自分の悪い予感が当たっていたことを知った。
化け物鳥は、
そして、ある場所で化け物鳥は着地した。目の前にいるのが、今回の事件の犯人だ。
……着地した場所は、ランガ山道の入口。
アルメダの、荷馬車の前。
「あなたが犯人ーーいや、犯人グループの一人ですね?」
私はそうやって、犯人に呼びかける。
「いやはや……まさか赤フードの冒険者が、ここまで鼻の効く人物だとは。てっきり、戦闘スキルに特化した人間だろうと侮っていましたよ」
もはや悪意を隠そうともしない声色でそう答えたのはーーアルメダの馬車のそばに立つ、ヤーク家の使用人だった。