ロールが終わり、ロビーに帰って来た縁達。
今回の参加者達はさっそく反省会等をしているようだ。
見物客は見物客同士、参加者は参加者達で話し合っている。
「お疲れ様でした」
縁がそう頭を下げると、風月達も頭を下げてお疲れ様と言う。
「縁ちゃん達は今日何か予定あるかしら?」
「特に無いですけど、ルルさん、何かありました」
「実は虚言坂さんの店で飲むのよ」
「おお、飲み屋ですか?」
「いや、回らない寿司屋さんよ」
「お寿司! 大将、マグロ!」
「店に来てから注文してくれ」
「お父さーん」
メーナが虚言坂が近寄って来た。
「私達は私達で打ち上げするから」
「おう、多分お前が年長だからしっかりするんだぞ?」
「ああ、わかっている」
それだけ言うとメーナは一本槍達の所へ戻っていった。
「んじゃ、ログアウトして大将の店に集合だ~」
「縁ちゃん達は私がタクシーで迎えに行くわ」
長谷川達はログアウトをしてルルの到着を待つ。
ルルと合流した後はタクシーで隣町へ。
着いたのは隠れ家的なお寿司屋さん『
扉には貸し切りの札がかかっている。
「おお貸切」
「おじゃましまーす」
荒野原が先陣を切って扉を開けた。
店内は落ち着いた雰囲気で、カウンターには大将とメガネをかけた店員。
席にはオシャレなおじ様と斬摩が座っていて、飲み始めている様だ。
「おう、いらっしゃい!」
「いらっしゃいませ」
「テキトーに座ってくれい」
長谷川達は席に座った、直ぐに荒野原が手を上げた。
「大将、五千円で握って下さい」
「今日は私のおごりだ、好きに食って飲んで下さい」
荒野原はイケてるおじ様の方を見る。
「おお、もしかしなくても、その声は輝夜様」
「はい、竹山奥輝夜ですよ」
「お~オフ会ぽくていですね」
「お、ならゲーム内の名前で呼び合うか?」
「よし、斬斬それ採用」
「ちゃんと斬銀とよんでくれ」
「あら、今考えたらゲームでも現実でもルルって名乗ってるわね、私」
「確かに」
お互いにゲーム内キャラで呼び合うと決め。
虚言坂もとい大将が、寿司をメガネの店員と共に握る。
縁はふと店内のお酒のポスターが目に入った。
高い日本酒のポスターだ。
「大将、あの日本酒もらえるかい? 輝夜さんこれは俺が払います」
「わかりました」
「あら縁ちゃん、いいお酒を頼むねぇ」
「この出会いに乾杯しよう、大将も一杯お願いできますか?」
「おう、仕事中だから一杯だけな?」
大将は目で店員に合図した。
店員はささっと長谷川が頼んだお酒を持って来た。
大将が全員分のおちょこにお酒を入れる。
「んじゃ、ここは縁の神様のお言葉をいいだこうぜ」
大将がそういうと全員の視線が長谷川に注目した。
「んーシンプルに……良き縁に乾杯」
長谷川の言葉と共に、皆はお酒を軽く掲げて乾杯と言った。
お酒と食べ物が進むと徐々に皆酔いが回ってくる。
大将と荒野原が特に盛り上がっていた。
「え? お2人はまだ結婚してなかったのか?」
「うむ、まだ両親に正式に挨拶もしていないけど、公認みたいなもん」
「んじゃ、結婚式の二次会にうちを使ってくれ」
「おお~大将のお寿司は美味いから有力候補だね~」
今回はお上品に食べ飲みしていね荒野原。
何かに気付いた様にハッとした。
「はっ! 縁さんよ、あたしゃとんでもない事を思いついたよ!」
「本当にとんでもない事なんだろうな」
「2人の結婚式はちゃんとしたのはもちろん、ゲーム内でもする」
本当に突拍子も無く、手が止まった長谷川を気にせずに、一番の爆弾を投下するのだった。
「そして! どっかの会場貸し切って縁と結びのリアル結婚式をしよう!」
「んな誰も来なさそうな催し物を」
「いや……以外と可能かもな」
「うそやん斬銀さん」
凄く疑いの目で斬摩を見る長谷川だが、勝算があるような笑い方をしていた。
「お金の事は一旦置いとくぞ? 実は社内にお前達の告白に感化された人達が多くてな」
「なんですと?」
「しかもそれが役職のある人達だ、昔を思い出して愛を語ったりデートをしたりしたらしい」
「なるほど、へっへっへ……うちの未来の旦那さんは知らない所で縁を強くしてるんだね~」
「ま、とはいえプレーヤーに社員が何かするってのは良くないだろ? だが『仕事のお客様』なら話は別かもな」
「例えば、公式オフ会で使ってる会場を貸してほしいとか? 確かあの場所って森山ボックス本社の敷地内にあったよね?」
「ああ、そういう事だな」
荒野原はこれはやれると思っている顔、長谷川は頭痛がしてそうな顔をした。
「私も力を貸せるぞ」
「輝夜様が?」
「小さいけどモデル事務所の社長をしています、我社に恩恵を受けた人達が居ます」
「メイクさんだったり、衣装さんだったり?」
「ええ」
「面白れぇじゃねーか、俺も近場の飲食店に駆け寄ってみるか?」
「なら私は飲み屋に掛け合ってみようかしら」
「大将、マグロ解体ショーなんてどう?」
「おいおい、大きくでたな? 面白そうじゃねーか」
長谷川を置いてきぼりで、どんどん話が決まっていく。
「えぇ……なんか本当に実現しそうなんだけど」
「はは、本当だな」
「……斬銀さんが発端ですよね?」
「ま、嫁さんが楽しそうでいいじゃねーか」
「ついに俺の宝くじが火を噴く時が」
「……お前もやる気満々じゃねーか」
「もちろんです、金は天下の回り物」
「お前珍しく悪酔いしてるか?」
「何を言います斬銀さん、良い酒もといいい縁に酔っているんですよ」
「よー口がまわる事で」
何だかんだ長谷川もノリノリだった。
後日、真面目にどうするか話し合ったのは言うまでもない。