長谷川と荒野原は今日もバイトだ。
珍しくちょいちょいお客さんが来る。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
買い物を終えたお客さんに頭を下げる2人。
「今日はお客さんが来るな」
「普通はそうなんだけどね、閑古鳥とラッシュがある店ってのがおかしい」
「確かに……そうそう長谷川君、お願いがあるんだけど」
「お願い?」
長谷川は荒野原の方を向いた。
「父方のおばあちゃんが長谷川君に会いたいと」
「って事は界牙流二代目の人か」
「そそ、終の旦那さんになる前に連れてきなさいって」
「気に入られてるんだよな?」
「毎日告白した時のロールを動画で見てるくらい」
「喜んでくれるのは嬉しいが、恥ずかしいな」
「お父さんの時もそうだったらしいよ? こんな素敵なお嫁さんを貰ってってずっと言ってたらしいし」
「ほほう……うん、俺に会いたいって言ってくれるなら、早めに会いに行こうか」
「何時にする?」
「予定の無い日か」
長谷川は手帳を開いた、ほとんどの予定が荒野原とデートかレアスナタだ。
予定を空けることなど容易く、次の土曜日に指が止まる。。
「今度の土曜日にするか?」
「よしきた、おばあちゃんに連絡入れておく」
「場所は?」
「車で約2時間」
「ああ……そこそこ遠いか?」
「私が車持っているから運転しよう」
「帰りは任せろ」
「おお、長谷川君運転できたんだ」
「まあね、腕がなまらない程度には親の車を運転している」
「へっへっへ、こりゃ当日が楽しみだ」
「ああ」
嬉しさを抑えきれない荒野原はニヤニヤと笑っていた。
長谷川もつい笑顔になり、手帳をしまう。
「そうだ、今日の交流会のお知らせ見た?」
「もちろん、参加と見物客は分けるみたいね」
「絡んだらグダグダになるからな」
「確かに、ああ、学園の見物客はシーナ先生がまとめてくれる」
「なら安心だ、俺達は一本槍のセコンドだな」
「お行儀よく席に座ってだけどね」
「後、ロビーに1回集まるんだよね?」
「ええ、見物客、参加者、指導組にね」
「あ、そこまで読んでなかったな」
「これもグダグダしないためだね」
「1人1人挨拶してたら時間無くなるもんな」
荒野原はふと時計を見た、もう直ぐお昼だ。
「そろそろ上がって準備しよう」
「お昼は何時もの通り道にある店にしようか」
「うん」
2人はゲートに向かう道中で昼食を済ませる。
ゲートに着いて受付を済ませて、割り振られたプレイルームへ。
長谷川はシートベルトとゴーグルを装着した。
「行くぜ、レアスナタの世界へ!」
目の前のスタートボタンを押す、長谷川から縁へ。
ゴーグルから見える景色はゲーム内ロビーになった。
縁はスファーリアと合流して待ち合わせ場所へ。
その場所には斬銀、ルルが居た。
そして、スーツ姿の美しい黒く長い髪、まさに輝夜姫と言われる様な容姿端麗と高貴な雰囲気だ。
さらに、着流しを着た老人の男性が居た、ちょっとぼさぼさの白髪に白い
「よう、縁にスファーリア」
「こんにちは、斬銀さん」
「こんにちは、斬銀君」
「おおこんにちはだ、早速だが紹介するぜ、この間ルルの店で話した竹山奥輝夜と虚言坂道也だ」
斬銀に紹介された2人は縁達に軽く頭を下げた。
「初めまして、竹山奥輝夜です」
「虚言坂道也じゃ、よろしく頼むぞ」
「縁です、よろしくお願いいたします」
「それじゃ、挨拶も済んだしロール開始ね」
「え、ルルさんいきなりですか?」
「大丈夫よ縁ちゃん、私達はガチ勢だから、てか今日のメインは私達じゃないから、ほぼ見ているだけ」
「いやまあそうですけど」
「参加者達がちゃんと話し合って流れを作ってくれるわよ」
「まあ開会式と閉会式はワシがやるがの」
虚言坂はニヤリと笑い右手で自分の白い顎を触っている。
スファーリアは確信したように頷いた。
「縁君、これは流れに身を任せるしかない」
「いやまあ何時も通りか」
「それじゃ、行くわよ」
ルルがメニューを操作して、一同は光に包まれて消えた。
これから交流会のロールが開始されたのだ。