「さあ、絶滅しあいましょ」
スファーリアはビーダーでトライアングルを叩いた。
「……」
「お前から『言葉』を絶滅させた」
隷属の神は喋っている様だが、声は出て無く物凄い怒っている。
「これはかなりの痛手だ」
「隷属の神ならば、言葉は一番の武器ですわね、何かを従わせるなら言葉が一番です、金品等の物はそれの補助にすぎませんし」
「あれはじわじわと絶滅させられるな」
「それはそうですわ、神社を壊した元凶なんですから、一撃で済むなんてただの慈悲です」
「どうした? 私の愛する人は、神は人知を超えた存在と教えてくれた、この程度造作もないだろ? 『人の手によって作られた技術』だからな」
「……!」
隷属の神は反論出来ない子供の様に、駄々をこねてる様に暴れている。
「縁君、この神弱いんだけど、風月の記憶と合わせると……かなり威張り散らしてたよね?」
「だな、今ならわかる、そいつは神じゃない」
「は!? 神じゃない!?」
叢雲は縁の言葉を疑い、目を見開いた。
「例外は有るが、神って生まれたら自分の位ってのが感覚でわかるんだよ、神の常識とかな? だって神だぜ?」
「私達は例外ですわね、半分人間ですし」
「え、じゃあコイツ何?」
「ジャスティスジャッジメントの汚れた思念から生まれた、神の紛い物だな」
「偽物の方が本物に見えると、聞いたことが有りますわ」
「なるほど、で、偽物の神様? 反撃は?」
「!?」
「全力をさっさと出したら? 出せる様にしましょうか?」
何も出来ない思念体に、またスファーリアはトライアングルの音を聴かせた。
「小娘が! ワシに散々言いやがって! 覚悟しろ!」
自分を神と思っていた思念体は、スファーリアに殺意をむき出しにしている。
力を溜めて巨大な黒い塊を作り、それをスファーリアに投げた!
難なく右手で虫でも払うかの様に、思念体の全力の攻撃を弾く。
だがその行動で、右肩から手まで消滅してしまった。
傷口から血の代わりに、音楽で使う記号が流れている。
「実力以上の力を出せる様にしたのに……片手だけか?」
「くっ! ぐぬぬぬぬぬ!」
思念体は相変わらず、目の前の現実を受け入れないようで、納得はしていない顔をしている。
「お姉様、自分の身体は大事にしてくださいまし」
「大丈夫、縁君、私の事は好き?」
「愛してる」
あからさまに嬉しそうな顔をするスファーリア。
その言葉を聞いた瞬間に腕が再生した。
「ほら、元通り」
「そうではなくて!」
「ごめんなさい」
「……戯れがすぎますわ」
本気で起こる絆にスファーリアは一瞬だけ、申し訳なさそうにした。
「妹に怒られたからこれで終わりにする、私から最後のプレゼント」
再びビーダーでトライアングルを叩く。
徐々に思念体の顔がこわばっていく、それは全てを理解した様な顔だった。
自分がどんな存在を相手にして、実力の差を消える前に理解した。
「……な! ああ! ああぁ! やめろ! やめろぉ!」
怯える思念体にスファーリアはゆっくりと近付く。
「絶滅!」
その言葉と共にビーダーで思念体の身体を突いた。
叫び声も無く、思念体はその場から消える。
スファーリアは最後に鼻で笑った。