とは言ったものの、何をしようか。
「みんなはやりたいことがあったりする?」
みんなに振ってみたものの、返ってくるのは「お任せ」や「戦う」といったもの。
別に悪くはないんだけれど、このまま制限時間まで戦っても心身ともに疲れ果ててしまうだけだ。
たぶん、最後の方とかは惰性で動くだけになってしまう。
「じゃあ、個人個人の特性とかをみんなそれぞれに理解し合うとかは?」
「それにしよう」
美咲の提案に飛びつく。
案がなかったからというのもあるけれど、これからのことに必要だと判断したからだ。
「まずは前衛の3人からかな」
「じゃあまずは僕から、かな」
話を切り出したのは桐吾。
「僕は最前線というよりは、カバーが得意だね。誰かが突撃して、回避したところに飛び込んでいくような戦い方だね」
「じゃあ次私ー。ズバッと突っ込んで、かき乱すのが得意かなっ」
「随分と大雑把だな。まあ俺も人のことを言えねえんだが。俺も得意なのは活きの良い大振りだからな」
前衛に関しては、それぞれが理解しているのは当たり前か。
「でも結月って前の時に、凄い連携してなかった?」
「あー、そんな時もあったね。じゃあ、そっちもできるかも?」
結月の解答を聞いて美咲は困惑の色を隠せていない。
頬をぽりぽりと指でなぞりながら「えぇ……」と。
「これからの方針としては、特技を積極的に活かしていきたいところだけど、そこをあえて別を考えてみようかなって思ってる。例えば、桐吾を切り込み隊長に、結月は……何かで、一樹を前衛の中でも後ろに配置するとか」
「なんだか私の扱いだけ雑じゃない?」
「僕としてはそれでも大丈夫だけど」
桐吾は一樹に視線を送る。
それはそうなのだろう、前衛の3人は、僕たち後衛より理解しているのだから。
「俺は……正直に言ったら、できるかはわからねえ。だが、やれって言われたらやるし、それがこのパーティにとって最適解なら、絶対にできるようにする」
そう意気込んだ一樹は、一瞬だけどこかへ視線を送ったような気がする。
「でも、無理なものを無理にとは」
「いや、俺が挑戦してみたいんだ。それに、俺はもっとみんなの役に立ちたい」
「わかった。戦術については後々。次は叶と一華」
「私は突撃もカバーもできるけど、得意なのって言われたら遊撃になるかな」
「私は得意なことって言われると、あんまりないんだけど……強い攻撃とか、大きい相手になら立ち向かえる、かな」
今回の試験で加入してくれた、盾役の2人。
それぞれの戦い方は異なるけど、どちらもしっかりと頼もしい。
「これは今のところなんだけど、叶は最前線に、一華は美咲を徹底して護ってほしい。と思ってる」
「いいね。私が一番活躍できる感じってことね」
「大丈夫だよ。私が絶対に美咲ちゃんを護る!」
「一華ちゃんありがとう。頼りにしてるね」
一華は美咲の言葉に「えへへ」と嬉しそうにしている。
ここが一番重要な配置になる。
もしも他の誰かが一時戦闘不能になったとしても、強固な守備の中に居る美咲が立て直してくれるのだから。
「じゃあ最後に後衛だね。私は回復……いや、冷静な状況判断能力だと思う」
「私はー、攻撃をぶっ放すこと! ……って言いたいんだけど、美咲に同じく冷静に状況を判断して的確な攻撃をする、かな」
「僕は、全体を把握して的確な情報伝達することかな」
器用貧乏にいろいろできるけれど、それは独りよがりだ。
みんなの役に立てることとなると、これだ妥当だろう。
「案外、彩夏の怒涛の攻撃が役に立つかもしれないよ」
「そうなの?」
「もしもの話だけれど、最終試験が対人戦となった場合、遠隔攻撃というのはとても重要になると思う。単純に攻撃できるっていうのもあるけれど、相手を分断したりと、相手を妨害するのに適しているからね」
「お、じゃあ私の活躍も目前ってかっ」
「彩夏、調子に乗らないの」
「へいへい」
「とりあえず、これで一旦はそれぞれの特技とかを把握できたと思う。次に必要なのは、戦術の打ち合わせ。ここからは、もしもというよりは、最終試験が対人戦だという前提で話を進めていくよ」