「
「はい!」
攻撃力アップの【オフェイズ】、移動速度アップの【ムーブサポート】が付与されている
掃討するに時間はかからない。アント程度なら2人の相手ではない。
2人の剣撃は、アントの急所に的確に攻撃――瞬く間に消滅。
「あいやー、あの2人息ぴったりだね」
「本当ね。攻撃も食らわずだから私的にも気が楽ね」
リラックスした様子で
「たしかにね。俺も気楽でいれるよ」
「そんなんで大丈夫なのー? ってほら、左!」
「おーう、任せろ!」
雑談をしていても
そして、
◇
「なんですか皆さん、もうギブアップですか? はぁ……もう少し頑張ってもらわないと最低限の評価しかできませんよー」
開始から一時間が経過していて、単純な体力不足から諦めたグループだ。
休憩も挟まず無鉄砲に戦闘を繰り返していれば、そうなってしまうのは仕方がない。
「まあ、離脱をやむ終えなかったパーティもいるようですが……」
「
「はい、お恥ずかしい限りですよ」
海原先生は、首の後ろをポリポリとかきながら二組の担任である
「はあ……こちらのクラスはもう残すところ、一パーティとそちらのクラスと組んでいる子たちだけなんですよ……」
「あ……そうなんです……ねぇ」
海原先生は、察した。
自分と同じように落胆している表情だったことに、親近感が湧き上がりため息を盛大に吐いてから姿勢を正し話しを戻した。
「今回の実技は、まだ先のほうが良かったですかね」
「少なくともうちのクラスはそうだった、と言えるでしょうね。海原先生の子たちは善戦しているようですが」
「褒めていただけで光栄ですが、まあ……もう少しでみんな戻ってくると思いますよ」
「あー、そういえばそうですね。もう少しでアレが出ますもんね」
◇
「
「みんなー! ごめーん!」
桐吾の鬼気迫るような声に、後衛は視線を集中させる。
視線の先、前衛の背後には、ランスラット、ソードラットが混合した計五体のモンスターが迫ってきていた。
二足歩行の武器持ちの鼠。もうほとんどが人間の体と一緒で、体毛がもふもふしていそうな見た目をしているけど、その上からでも分かるほど筋肉質な体。ただ、人間よりは一回り、二回りぐらい小さい。
あのモンスターは序層より上、初層である十一から二十階層に出没するアクティブモンスターであり、先ほど戦闘したラットの上位種。
「えっ、うそっ!
「えっなになに
「彩夏ってば、この間勉強したでしょ!」
「あいつら、武器持ってる! 俺がヘイトを稼ぐからみんな逃げて!」
「それはできないよ! あいつに効く魔法属性は――ああ! わっかんない!」
間違いなく、みんなは突発的なこの状況に混乱状態に陥っている。
全員が全員の顔色や行動を窺って、後衛は足を止めてしまった。
けど――数も数。乱れたみんなの心を一つにするため、僕は声を張り上げて指示を出す。
「大丈夫っ! 退避ではなく討伐!」
「おっけー、しーくん!」
「わかった!」
まず初めに反応したのは
敵に背を向けながら距離を取っていたところを急停止して反転。
それに続き桐吾も反転――剣を正面に構える。
「戦術は今までと一緒!
「おっけー!」
「わかった!」
「お、おうよ、任せろ!」
「彩夏は2人に加勢、幸恵は康太を援護!」
右往左往していた彩夏と幸恵は泳いでいた焦点をモンスターに合わせ、行動開始。
ばらけていたみんなの心は再び一つになって、持ち直すことに成功。
――それから、五体のラットを討伐することに成功。
初めて感じる一体感。
文句の一つも出ないほどの個々の能力と連携力。
僕はこのとき初めてパーティの楽しさを知った。
そして、僕はこの高揚感と一体感に心が躍っていた。