「私もテオ様と…」
そこまで言うとテオ殿下が唇を奪うように口付ける。長く甘く、激しい口付け。テオ殿下の手が私の体を撫でている。不意に唇が離れる。テオ殿下が立ち上がり、私の手を取り言う。
「おいで。」
立ち上がるとテオ殿下はベッドの前まで歩く。立ち止まると私をフワッと抱き寄せて背中にある紐を解き始める。耳元で囁く。
「もう止めないよ…」
そう囁いて耳の周りをその唇でくすぐる。鳥肌が立つ。
「んっ…」
思わず声が出る。背中の紐が解けてドレスが落ちる。コルセットの紐を解き始める。恥ずかしくてテオ殿下の胸板に頬を寄せる。
「大丈夫、俺に任せて…」
テオ殿下がまた囁く。コルセットが落ちるとテオ殿下は私を抱き上げベッドに優しく乗せる。自らボタンを外してシャツを脱ぐ。彫刻のような鍛え上げられた美しい体に溜息が出る。私に覆い被さり口付け、口付けながらテオ殿下の手が私の胸を包む。その指で乳房の先端を嬲る。唇が離れるとテオ殿下の唇が落ちて行く。
「綺麗だ…」
テオ殿下が呟く。テオ殿下の唇が私の乳房の先端を含む。
「あっ…」
体が仰け反る。テオ殿下の舌先で転がされた所が熱い。鳥肌がまた立つ。テオ殿下の手が滑って下りていく。足の間にその手が入る。ゴツゴツしたテオ殿下の指が優しく私のそこに埋まる。指がホンの少し中に入る。
「すごいね、もうこんなに濡れてる…」
テオ殿下が私の胸を嬲りながら言う。恥ずかしくて目を閉じる。テオ殿下は私の下着を脱がせると、言う。
「そのまま目を閉じていて…痛くないようにたくさん濡らしてあげるから…」
私の足の間に入りこんだのか、足が開かれる。次の瞬間、今まで感じた事の無い程の快感が襲う。
「あぁっ…!」
思わず目を開けて見てしまう。テオ殿下は私の足の間に顔を埋めている。何て事…こんな事…こんなにいやらしい事を私は今…。テオ殿下は舌先で私の一番敏感な所を嬲る。ビクビクと体が震える。足先と腰が痺れて来る。どうなってしまうの、私、怖い、怖い…。シーツを掴む。身体が強ばる。次の瞬間、パーンと何かが弾けてビクンと体が跳ねて体の力が抜ける。体がビクビクと震える。息が切れて上手く呼吸出来ない。
「まだだよ、ジル…」
甘く低い艶やかな声。テオ殿下を見る。テオ殿下は自身の着ていたものを脱ぐ。テオ殿下のそれがそそり立っている。何て美しいんだろうと思う。テオ殿下は私に覆い被さり私の足の間にそれを据えると言う。
「挿れるよ…」
私のそこにテオ殿下の熱くて硬いものが入って来る。息が詰まる。
「力を抜いて…俺に掴まって…」
テオ殿下の首に手を回して掴まる。
「俺を見て…」
そう言われてテオ殿下を見る。テオ殿下はその瞳にダイヤモンドのような涙を浮かべている。テオ殿下がそのまま腰を押し込んで来る。何かが千切れる感覚がして、その瞬間、私は悟った。あぁ、これが純潔を散らすという事なのだと。テオ殿下は眉間に皺を寄せて私の頬を撫でる。
「痛い?」
聞かれて頷く。何故か目頭が熱くなり涙が溢れて来る。テオ殿下は甘い溜息を吐くと言う。
「ジルは何て美しいんだろうな…こんなにも美しい人が俺のものとは…」
そして私の耳元に顔を埋めて言う。
「動くよ…」
優しくゆっくりテオ殿下が動き出す。痛いけどそれだけでは無かった。徐々にテオ殿下の動きが早くなっていく。
「あぁ、ジル…愛してる、愛してる…」
熱に浮かされたようにテオ殿下が言う。テオ殿下が腰を打ち付ける度に一番奥にそれが当たって息が詰まるのにそれが快感に変わっていく。体の中心が熱くなっていく。テオ殿下にしがみつく。
「あぁ、ジル…!」
テオ殿下の腰が一番奥に押し込まれる。そのまま押し付けられる。次の瞬間、体の中に熱いものが注がれる。それを感じた瞬間、ガクガクと体が震えて私のそこがキュウキュウとテオ殿下を締め付けていた。体の力は抜けているのに、そこだけ別の生き物のように。テオ殿下が私を見つめる。息を切らしているテオ殿下はとても素敵だった。
「ジル…愛してるよ…」
切なく歪む顔に触れる。
「私も…愛してます…テオ様…」
テオ殿下は少し微笑んで言う。
「こんな時くらい、呼び捨ててくれ。」
テオ殿下が目を閉じて自分の額を私の額にくっ付ける。
「愛してます、テオ…」
言うとテオ殿下は目を開けて私を見ると微笑み、優しく口付ける。
裸のままテオ殿下は私を抱き寄せると息をつく。
「このまま眠ろう、片時も離れないように。」
テオ殿下の腕に抱かれて眠る。テオ殿下のあんなに切なく歪む顔を見られるなんて、私は何て幸せ者なのだろう。こうして私を抱き締めてくれるこの人をこの先も愛していこう。
「誰にも引き裂かれる事の無い二人になろう…」
テオ殿下が呟くように言う。私はクスッと笑って言う。
「もう誰にも引き裂く事なんて出来ません。」
テオ殿下を見上げる。テオ殿下は少し驚いている。
「私の気持ちが虚ろう事はありません。こんなにも愛しているのだから。」
テオ殿下は私を抱き締めて言う。
「ジルには勝てないな…」
翌朝目が覚めるとテオ殿下が私を優しく見つめていた。
「おはよう。」
その様子に私の胸はまたときめく。あぁ、何て素敵なんだろう。
「体は大丈夫?」
聞かれて私は少し体を動かす。ホンの少し鈍い痛みがあった。
「大丈夫です。」
言うとテオ殿下は微笑み私に軽く口付けると言う。
「名残惜しいけど俺は仕事に行かなくちゃいけない。ジルは寝ていて良いよ。」
テオ殿下が部屋を出て行く。ベッドから見送って私はまたベッドに潜り込む。テオ殿下の優しい香りがした。昨日の蜜事が思い出される。体が疼く。あんな事をこれからもテオ殿下と…そう思うと恥ずかしくて死んでしまいそうだった。昨日の一糸纏わぬテオ殿下はとても素敵だった。あんなテオ殿下を見られるのは私だけなのだ。強烈な優越感。テオ殿下は女性にモテる。なのに今まで女性の影は無かった。いつも遠征に行ったりしていて、帰って来てもいつも騎士団の人達に囲まれていた。誰一人として女性を寄せ付けない人だった。今は私だけを傍に置いている。こんなに愛されていると実感するなんて。ホンの数日前の私では想像も出来なかった事だ。
うたた寝をして、目が覚める。そろそろ起きないと。そう思って体を起こす。そこで溜息をつく。どうしよう、ベルを鳴らして良いものか…。でも仕方ない。ベッドヘッドに置いてあるベルを鳴らす。部屋の外でバタバタと音がしてノックが響き、失礼しますと言って入って来たのはギリアムだった。ギリアムはベッドの上の私を見るとハッとしてお辞儀をすると言う。
「別の者を寄越します、お待ちください。」
私は驚きと喜びとで飛び上がりそうだった。これは!一大事だ!急いで侍女長のメアリーの所へ走る。侍女長の部屋にノックもせずに入り言う。
「メアリー!来てくれ!」
メアリーは眼鏡越しに私を見て聞く。
「なんだい、急に。ノックもせずに。」
私はメアリーに近付いて耳打ちする。
「テオ殿下が、その、昨日、ジル様と…」
そこまで言うとメアリーはハッとして私を見る。
「それは本当かい?」
見る見るうちにメアリーの顔が綻ぶ。
「テオ殿下の部屋のベルが鳴らされたから何も考えずに入ってしまってね。ベッドにジル様がお一人だった。すぐに行ってくれ。」