「ねぇゆーし、そろそろ昼ご飯食べない?」
「へ? 焼きそばと焼き鳥とフランクフルト食べたけど」
「それはお昼ご飯じゃなくてつまみだよ〜! 私お弁当作ってきてるから、一緒に食べよ?」
「なっ……まずい。俺てっきり今日はお弁当無いと思って結構食べたぞ。入るかな……」
「だいじょ〜ぶ! ゆーしが私のお弁当残したことなんて一回も無いもん!!」
「絶妙にプレッシャーかけてくるな……」
お弁当を用意してくれてるなら言って欲しかったな。てっきり店での食べ歩きが昼ご飯になるだろうと思って由那と一緒にかなり食べてしまった。
由那のお弁当はかなり量が多い。普段ならちょうどよく満腹になる程度の量で俺的にはピッタリだが、今日に限っては違う。確かに由那に出されたものを残すなんてことは絶対にしたくはないが、いつも通りの量なら食べ切れるかどうか……。
「安心して、今日は特別メニューだよっ。いつもより食べやすいし、量も少ないから!!」
「そ、そうなのか? ならよかった」
というか由那さん、あなたは俺以上に食べてましたけど。その細い身体のどこにそんな大量の食べ物を消化できる器官が備わってるんだ? 俺はもう腹六分目といったところだけど、由那の様子を見る限りまだ半分にも至って無さそうだ。
ま、まあそんな食いしん坊な彼女による量が少ないという発言をどこまで信用していいのかは分からないが、どの道由那の手作り弁当を残すという選択肢はない。腹を括るとしよう。
「じゃあ決まりっ! 更衣室に荷物と一緒に置いてるから取りに行ってくるね〜! 食べる場所はもう決めてあるからとりあえずここで待ってて!!」
「え、どこで食べるんだ?」
「えへへ〜内緒っ。お楽しみ〜!!」
可愛い……じゃなくて。
食べる場所、俺の思いつく限りだとそんなに多くはないんだけどな。
基本的にどのクラスもそこで買った物を中で食べるというスペースの使い方なわけで、勿論お弁当を持ち込んで食べるためだけに使うと言うのは無理だ。
というか由那なら多分二人きりになれる場所を選ぶはず。いつもならそれが先生に合鍵を貸してもらっている空き教室だけど今日は使えないし。
じゃあどこにするのか。更衣室……は流石に無理があるだろうし、廊下も今日は人通りが多いところばかりだ。となると外のどこかになるのだろうか。
(まあ由那のことだし。多分いい場所を用意してくれてるんだろうけどな……)
二人きりでイチャイチャすることに関してはピカイチで頭を働かせ、最善を実行してきた彼女のことだ。ほぼ間違いなく俺は由那と二人きりでの昼ご飯にありつけることだろう。
今日の文化祭デートは充分に楽しいものだったが、まだあまり二人きりでのイチャイチャは遂行できていない。そろそろ俺もゆっくりとした場所で人目を気にせず彼女さんを堪能したいと思っていた。
「くふふふふっ。ゆーし、絶対驚くぞぉ。早くお弁当取って戻ろっと♪」
そうやって期待に胸を膨らませながら。俺はスキップ混じりにお弁当を取りに行く由那の背中を、じっと見つめていたのだった。