第127話 女帝と恋人1

 俺達の順番が来ると、教室の中に案内される。


 中は黒いカーテンと紫中心の装飾で薄暗くされており、用意されていた二つの椅子に並んで座ると。机を挟んで正面に現れたのは黒子のような衣装を着た誰か。


 机の上には水晶、彼? 彼女? の手には恐らくタロットであろうカードの束が。なんというか、思っていたより本格的だ。


「ようこそ。ここは占い部による占いの館。本日はお二人の何をお占いいたしましょう?」


「はいはい! 相性占いしてください!! ゆーしと私の相性!!」


「承知いたしました。では、早速取り掛からせていただきます」


 そうか、占い部。そんな部活があったことは知らなかったが、それを専門にやってきた部活の出店だからここまで本格的なわけか。


 まあ本格的な分、お金も他のところより高いが。それはこの際気にしないでおこう。


「今回はタロットカードを使わせていただきます。相性占いとのことですが、見たところお二人は既にお付き合いをしている様子。でしたら簡単な問いかけに解を見出すワンオラクルではなく、ツーマインドによるスプレッドで実行することにしましょう」


「ワン……なんだって?」


「まあ要するに二枚のカードを使ってやる占いということです。お二人の前に一枚ずつ配置されたカードが、各々を示すものとなっております」


 タロット、か。正直全く知識が無いから何が何やらなんだが、つまりは目の前に配られたカードに何が書いてあるかによって占ってくれるってことだな。


 確か昔漫画で死神の正? 逆? みたいな単語を聞いたことがあるような気がする。カードの向きによって示している答えが違ったりするんだっけ?


 まあ考えても分かるわけがないし。大人しく見ていることしかできないか。


「ワクワク、ドキドキ……!」


 目を輝かせる由那に見つめられながら、声が察するに女の人な黒子さんがカードをシャッフルしていく。


 ギャンブルの場におけるディーラーがやるようなガチガチのシャッフルではなく、軽いもの。カード一枚一枚が大きくて混ぜ辛いこともあるのかもしれないが、恐らくはそこまで混ぜる必要もないのだろう。


 そうして山札の一番上に来たカードを由那の前に、二枚目のカードを俺の前に置く。


「では、開きます」


 ピラッ、と音を立てて捲られたカードはそれぞれ、白いドレスに身を包んだお姫様のような女の人が映っているものと、神様の下で二人の男女が空を見上げているもの。


「なるほど。そちらの女性の方が女帝の正位置。男性の方は恋人の逆位置……ですね」


 ぎゃ、逆位置? なんか悪い意味な気がしてならないんだが。というか由那が女帝って……。


「ねえゆーし。今ちょっと笑わなかった? 私が女帝じゃおかしいのかー! しゃーっ!!」


「わ、笑ってない。笑ってないって。……ぷふっ」


「笑ってるじゃんかぁ!! むぅ、私だってもう立派な大人なのにぃ」


「ふふっ、いえいえ。女帝のタロットはそちらの方によくお似合いかと思われますよ。彼氏さん、恋人の逆もまた……ね」


「へっ……?」


「では、順に結果の説明をさせていただきますね」


 お似合いって……。




 ダメだ、ちょっと不安になってきた。