月夜のブラッドリア03現代ファンタジー·スーパーヒーロー2024年07月26日公開日2,129文字連載中日本ではある事件が世間を賑わせていた。
 犯人不明の謎の変死、怪死事件。このまま未解決事件として終幕すると云われてた。
 高一の少年十六夜は変死、怪死事件に非常に興味を持ち、調べていた時!! 犯行現場を目撃する。
 この世に決していない存在であり、存在を許されない種族。吸血鬼。
 十六夜は逃げて、逃げて追い詰められた、そんな時彼を救う光が現れた。
「少年大丈夫かい?」
これが彼の人生を大きく変える出会い。
 十六夜が吸血鬼と出会ってから世間は吸血鬼の話で持ちきりだ。
 彼は吸血鬼の少女カナエと出会い、様々な出会いと別れを繰り返し葛藤する。
 苦しくて辛い決断をする!!
「君になんか出会わなければよかったよ」
葛藤に塗れた少年と吸血鬼の在り方を考える少女、二人の破天荒で異色のコンビ!!
「君がいなければ私は吸血鬼の王でいられた」 
第1話 夜空での出会い

夜空が見える暗い夜道の中、俺は歩いている。

 街の街灯は薄暗く、路地には人の気配すら感じない。

 そもそもこんな時間に出歩いてる方が可笑しいのだ。もし警察に職質されたら一発アウト。

 一応現役高校生の為、深夜徘徊はまずい。だけど、そんなリスクを犯してでも確かめたい事がある。

「まぁだからといってあるとは限らんか」

 一人言が空へと消える。

 まぁもしここにお目当ての物なかったら無駄足だな、その場合、流石に諦めるか。

 変に動いて警察に疑われても困る。

 今世間を賑わかせている変死──怪死の犯行を見てみたい。

 そんな単純な淡いな気持ちであり、他の人からすれば危険思考と思われるだろう。

「それでも見てみたい、この胸に抱いた好奇心を解き明かしたい」

 と、思った時、ズボンのポケットに入れているスマホが振動する。

 スマホを取り出して見ると、画面にメッセージが表示された。知らない名前からだった。

『rewrite』

「一体誰だこれ? 流石に不気味すぎて怖いけど……」

 名前もメッセージ内容も一緒でrewriteと書かれていた。それ以外は何もない。

 ピロロンと着信を知らせる、『rewrite』と表示されている。恐る恐る──出てみる。

 数分間、無音が続く、一体誰なんだ? 何で電話掛けて来た? 頭を回し、思考を巡らしても答えなんか出る訳がない。

「あの誰ですか?」

 俺が聞いても言葉は返って来ない、だが、次の瞬間、通話と背後からほぼ同時に物音が聞こえる。

 今のは偶然か? だとしてもあまりにも重なり過ぎている。

 だとすると、自然に考えられるのはこのrewriteが近くにいる。一つの仮説を立てるだけ立て、通話を切った。

「……恐怖より好奇心が勝つ」

 半歩、下がり踏み込む、物音をした方へ足を進める。

 危険、もしくは例の犯人かもしれない。

「その時はその時だな」

 客観的に考え、ひたすら足を進める。約、一、二分歩いた場所の横に路地裏がある。

 ふと見る、するとそこには人が倒れていた。しかも地面には大量の血が流れている。

 ゾゾゾと体が悲鳴を出す、危険だ、今すぐここから立ち去れ、

「君、見ちゃったんだ、じゃあもう死ぬしかないね!」

 信じられないくらいの優しい声音、でもそれとは裏腹に冷酷な一言。ポンと肩に手が置かれる。

 人の手にして異常なくらいの白い肌。

 ……多分死ぬ。恐怖で体が支配されている、死ぬならばせめて顔だけでも見てやる。

 半歩前に体を出し、振り向く。

「白い肌に赤い瞳。それにその牙?」

「見られたならば殺すしかないな、まぁどっちみち殺すんだけど」

 殺意を剥き出しに男はこっちを見る、ニヤニヤと楽しんでいる。

 そんなに人を殺すのが楽しいか、ゲームでも何でもないんだぞ! 自分で思っといて馬鹿らしくなってきた。

 殺すならば早くしてくれ、

「大丈夫かい少年」

「えっ?」

 目を瞑ったのと同時に声が聞こえた。俺は目を開けるとそこには! 白銀の髪に碧眼の目を持つ少女がいた。

 そして目の前にいるはずの男は首だけ無くなっていた。

「ねぇ君、名前は?」

「……十六夜」

「それ上の名前でしょ? 下の名前は?」

「ない、俺の名前は今も昔も十六夜だ」

「……なんだ私と一緒か。私はカナエよろしくね」

 カナエと名乗る少女は優しい顔付きで微笑む。

 本当に一体この子は何なんだ?

「十六夜君、ここから離れようか? 多分、もうじき……ホラね」

 静寂の夜の中にサイレンが鳴り響く、少女はこれを予想していた。

「ここに君も私もいると容疑者にされちゃうからね〜」

 いやあんたは確実に人殺しているだろ! と、内心でツッコミを入れるが、少女が言ってることに間違いはない。

 少なからず、助けて貰ったのは事実だ。

 「へぇここが君の部屋か。一人暮らし? 家族はいないの?」

「グイグイ来るすね」

 少女──カナエさんと俺はあの場所を離れ、移動をした、したのはいいが行く場所が特に思いつかなかった。

 だから自分の部屋に取り敢えず上げた。

「ん、まぁそうだね。ただの軽い雑談さ、沈黙でもつまらないし」

 まぁ言っていることに一理あるか、見知らぬ女性と二人きり、沈黙でつまらないより気まずさが勝つ。

 カナエさんはなさそうだな、人の部屋をジロジロと観察しているくらいだし、

「そんなに観察しても何もないですよ」

「君って案外ドライって言われない?」

「そうすかね? あ、まず人と喋る機会ないんでわからんす」

 カナエさんは「ハハッ」と乾いた笑みを溢した。

 沈黙に入った、うん、完全に滑ったな、だから人と話すのは苦手だ。

 なにか、話題……話題、あ!

「カナエさんはなんで俺を助けてくれたんすか?」

「何を言うかと思ったらそんな事聞く?」

 カナエさんは吹き出し、笑顔だった、さっきまでの凛々しい表情と違い、年相応の笑顔。そう感じとれた。

「逆に君はたすけて欲しくなかったの?」

「俺は……分からないです、あの時死を覚悟しました」

 本当は少し違う、覚悟なんかしてない、もうここで終わりかくらいにしか思ってない。

「十六夜君、質問に答えて上げるから私のも答えて」

「分かりました。一体何ですか?」

「君を襲ったあの男は一体何だと思う?」

 なんの意図を持っての質問なのか分からなかった。

 あれは人間……本当にそうなのか? 頭では人間と認識している。でも体が拒絶をしていた。

 あれは人間ではない別の生物だと。

「その様子だと少しは理解してそうだね。あれは吸血鬼さ」