「てんちょー、氷ノ山神社の雪宮さんから、ダブルベジタブルL、二枚入りましたー」
「よし、俺が行くよ」
「……は?」
ぽかんとしている新人バイトを横目に、和也は手早くピザを焼き上げると、梱包してバイクに積み込んだ。
二号店に異動になって一ヶ月、彼は今や本物の店長だった。
でも実際には、あの先輩が店長に内定していた。元々気乗りしていなかった彼は、なんと美貴と取引をしたのだ。
店長職と兎の護符を――嬉々として。
『ナンパ出来ない人生なんて死んだも同然』と言って。
直接和也に言わなかったのは、同情で職を譲られたと彼に思わせないための配慮なのだろう。後でバレたが。
――やはりあの男の頭の中身は不可解だ。
ところで、先日和也が美貴に贈った指輪は、和也の母親が倒れる直前、美貴の誕生日プレゼントにと買っておいたものだった。
――しかし、あんな形で贈ることになるとはな。近々向こうのお袋さんにも、婚約の挨拶に行かなければ――。
氷ノ山神社に着き、長い階段を昇ると社殿の前であのガキ、いや、ご祭神様が呑気にアイスを食いながら、和也を待ち構えていた。白い玉砂利からの照り返しが、彼の銀髪をキラキラと輝かせている。
ご祭神は和也に気付くとニヤリと笑った。
そう、あの日マンション前で日干しになってた、そして十年前のあの時の神サマだった。
和也は帽子を取って、深々と頭を下げた。
「毎度、ピザキャットです。……ご注文の品、奉納に参りました」
――今日は俺の
(了)